「確定申告はめんどくさそう」、「確定申告をしたら、会社に副業がバレてしまう」、「そんなに利益がでていないから大丈夫」そう考えて、副業の確定申告をしていない人がいます。
この記事は、副業者が確定申告をしない理由と、申告をしなかった場合のリスク、申告をすることのメリットを、現役FPがわかりやすく解説します。
ぜひ来年の確定申告の参考にしてください。
【FPが解説】副業で確定申告しない人が多い4つの理由。申告しないことのリスクと対処法
「確定申告しないと…」と思いつつ、副業者が確定申告をしない理由はいくつかあります。まずは代表的な4つの理由を紹介し、一つ一つ解説していきます。
確定申告は稼いだ分の税金を納めるという、重要な手続きです。納税をしていないことが判明した場合には、リスクがあるので、それを避けるためにも適切に行う必要があります。
確定申告をしない副業者が多い理由の一つに、確定申告の知識が不足していることが挙げられます。確定申告は、副業による収入がある場合には必要な手続きですが、その手続きや必要な書類についての知識が不足しているため、多くの副業者が確定申告をしないですませてしまっています。
具体的には、確定申告の期限や提出書類、申告方法などについての情報が不足しているのです。また、副業による収入が少額である場合や、副業を始めたばかりである場合には、確定申告の必要性についての認識が低いこともあります。
「確定申告は手間がかかりそう」「難しそうだし、めんどくさい」という理由で、確定申告の手続きを煩雑であると考え、避けてしまう方もいます。
実際のところ確定申告には、所得の計算や必要な書類の準備、申告書の作成など、多くの手続きが必要です。また、税金に関する知識、申告期限や提出先などのルールも守ってなどと考えると、避けたくなる気持ちもわかります。
でも、会計ソフトを使って確定申告の手続きを簡単にしたり、わからないことを税務署の無料相談で聞いたりするなど、手間を減らす対策もありますよ。
第3の理由として、「本業が副業を禁止している」というものがあります。「副業解禁」と言われていても、まだ本業の遅延や競合する懸念から、副業を禁止している会社や組織があるのも事実。
しかし、副業を禁止されていることと、確定申告をしないことは別問題です。副業による収入は所得なので、確定申告をしないと法律違反になります。
この状況を回避するために、まずは会社や組織のルールや規定を確認しましょう。副業を禁止していても、不動産投資(家賃収入)などの特例や許可制度がある場合もありますよ。
4つ目は、納税しなかった場合にどんなリスクがあるのかを、認識していないという理由です。そもそも、副業の収入に対する税金の申告や納税の必要性を理解していないため、悪気なく確定申告をしないですませてしまいます。
しかし、確定申告をしないと、さまざまなペナルティが課せられる可能性があるのです。それは、無申告加算税や延滞税、重加算税などで、これらのペナルティは、未納税分に対して追加で税金を課せられるため、損をしてしまいます。
ここでは確定申告をするべき副業者がしなかったときに課せられる、3つのペナルティを解説します。
これらが適用されると、申告漏れの金額に対して最大で20%の税金が加算されます。知識として知っておくことで、避けられるリスクです。
無申告加算税は、確定申告をするべき副業者が確定申告をしなかったときに、課せられる可能性のあるペナルティです。具体的には、支払うべき所得税の税額に加えて10%から20%の割合で加算されます。
副業の収入は、本業の収入と合算され、所得税の対象となります。しかし、副業の収入を申告せずにいると、本業の収入だけで所得税を計算することになります。これにより、副業分の所得税の納付額が不足し、無申告加算税が課される可能性があるのです。
無申告加算税を回避するためには、副業の収入を正しく申告することが重要です。会社で本業の年末調整を済ませている人も、副業の収入は、確定申告書の所得欄に適切に記載し、所得税を正確に計算しましょう。また、副業の収入に関する領収書や経費の明細などの書類をきちんと保管しておくことも重要です。
延滞税は、確定申告の期限を過ぎても申告をしなかった場合に課される遅延損害金のことです。確定申告では、前年1月1日から12月31日までの所得に対する税金を、翌年の2月16日から3月15日までに申告し、納付しなければなりません。個別の事情で遅れるときには、管轄の税務署に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を出し、承認を得ます。
延滞税は、所得税や住民税の未納額に対して一定の割合が加算されます。計算方法が複雑なので、詳しく知りたい方は国税庁HP:「延滞税について」を参照ください。払うのが遅くなれば、その分延滞税も増加していきます。
重加算税は、故意または重大な過失により確定申告をしなかった場合に課される、追加の税金です。無申告加算税や延滞税とは異なり、重加算税は所得税や消費税などの税金額に対して課されます。
重加算税の税率は、所得税の場合は10%、消費税の場合は5%で、本来の税金額に対してそれぞれ加算されます。
確定申告が必要な主な理由は、次の3つです。
それぞれ、メリットと共に見ていきましょう。
一番は、納税の適正化です。副業による収入も所得なので、確定申告をすることで、収入に応じた税金を正しく納められます。これは、社会や税制の公平性を保つために重要な要素で、社会全体の公共サービスや福祉に税金が還元されます。
利益がでたときには多く納めますが、損失ができたときにはマイナスで申告し、その損失を次年度以降の所得から控除することができます。これは大きなメリットです。だから、金額の多い少ないで判断せず、毎年するようにしましょう。
前述の通り、確定申告をすべき人がしていない場合、ペナルティとして追加の税金が課せられます。小学校で習ったように、「納税」は「教育」、「勤労」と並ぶ国民の三大義務です。「確定申告の仕方がわからなかった」、「自分には必要ないと思っていた」では、済まされません。
確定申告のやり方を調べたり、手続きに時間や労力をかけたりすることを惜しんで後回しにせず、期限までに納めましょう。申告するよう指摘された場合の加算税や社会的信用に傷がつくことは、デメリットでしかありません。
税務調査は、税務署が個人や法人の所得や支出について詳細な調査を行うもので、副業についても正確な収入や支出を証明する必要があります。
納税者全体の1%強に対して行われているため、「自分のところには来ない」と考えている方もいるでしょう。しかし、個人の所得があるのに申告をしていない人、相続税の申告をした人には、税務調査の対象になる確率が高まるといわれています。
確定申告をしておけば、税務調査に必要な収入に関する書類や経費に関する領収書などを整理することにもなり、税務調査の際にスムーズに対応できます。
尚、税務調査に応じない場合、1年以下の懲役または20万円以内の罰金が適用されるというデメリットもあります。
私の夫も、何年か前に税務調査の対象になりました。確定申告から2ヶ月経ったころ、税務署から封書が届き、期日とともに、書類や領収書等を全て税務署に提出するよう記載されていたのです。
「なにかしたの!?」と一瞬、焦りましたが、悪いことはしていないため、指示通り同封されていた大きな封筒にファイルを入れて、郵送で提出。
結婚してから10年以上、毎年確定申告をしていて、書類は夫婦別々に、1年ごとに1冊のファイルにまとめていたので、スムーズでした。1ヶ月ほど経って「ご協力ありがとうございました」と、ファイルが返送されるという、貴重な体験でした。
確定申告をしていない副業者は、万一税務調査が入った場合に慌てず対応できるよう、対処方法を心得ておきましょう。不正確な申告があれば厳しいペナルティが課せられる可能性もあります。
確定申告をしない理由が、必要書類の整理が面倒だという人もいるでしょう。確定申告に必要な書類は、源泉徴収票や給与明細、領収書など様々ですが、これらを整理することで確定申告はもちろん、税務調査もスムーズに進められます。
まずは、副業に関連する全ての収入や支出に関する書類を集めましょう。収入に関しては、源泉徴収票や給与明細、クライアントからの領収書などが該当します。支出に関しては、仕入れや広告費、交通費などがありますので、それらの領収書も集めておきましょう。
次に、これらの書類をカテゴリーごとに整理します。例えば、収入に関する書類は「給与」と「クライアントからの支払い」などに分けてファイルにまとめると便利です。支出に関しても同様に、カテゴリーごとに整理しましょう。
また、必要書類の整理には電子化も有効です。スキャナーやスマートフォンのアプリを使って書類をスキャンし、クラウドサービスや外付けのハードディスクに保存しておくことで、書類の管理が簡単になります。
副業の場合、税理士への相談をしたことが無いという方も多いでしょう。税理士は、税金のプロとして、確定申告をスムーズに行うための助けとなります。
相談をすれば、必要な書類を集めるよう指示し、副業者の収入や経費を正確に計算し、適切な節税対策を含めて、提案してくれます。また税務調査のときには、副業者の代理人として対応することも可能です。
相談する人が身近にいなければ、すぐに税理士を探して、積極的に相談してみるのがおすすめです。
確定申告期限を過ぎてしまった場合、税務署に期限後申告という手続きを行う必要があります。この際、ペナルティとして無申告加算税や延滞税、重加算税を支払う必要があります。
また、期限後申告は税務署の審査が厳しくなる傾向があります。税務署は、期限を過ぎての申告に対して不正申告の可能性を疑い、詳細な調査を行うためです。
いかがでしたでしょうか。
「手続きがめんどくさそう」、「確定申告をしたら、会社に副業がバレてしまう」、「そんなに利益がでていないから大丈夫」など、副業者が確定申告をしない理由は様々です。
しかし、確定申告をしないと、税金の負担という金銭的なリスクの他、社会的な信用にも傷がついてしまうこともあります。実際、大企業が不正な会計をした場合、株価が暴落したり、市場で商品が売れなくなったりするということが起きています。
今は会計ソフトを使えば、簡単にできるので、「難しそう」「めんどくさい」という先入観を捨てて、ぜひ確定申告をしてください。
この記事を書いた人
鈴木恵理
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