日本では副業が身近になっている一方、興味はあるけどできずにいる人もいるのではないでしょうか。
世界でも国によって副業事情には、さまざまな特色があります。
この記事では、世界の副業事情から学ぶこれからの副業についてお伝えします。他の国の働き方を学ぶことで、今のあなたの働き方を変えるきっかけにしませんか。
【世界の副業事情】働き方を考えるきっかけに!
日本では厚生労働省が2018年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定。さらに2022年7月には改定され、副業しやすい環境が少しずつ整っています。
求人サイトでも「副業OK」の仕事が増えて、働き方がより自由になってきました。
先述の通り、副業がしやすい環境が整いつつある日本ですが、副業に興味はあるけどできずにいる人が多いのが現状です。
キャリアや就職・転職に特化した匿名相談サービスを開発・運営をする株式会社ライボの調査機関『Job総研』の「2023年 副業・兼業の実態調査」によると、勤務している社会人のうち、副業・兼業している人の割合は22.6%と、全体の4分の1にも達していません。
同じ調査では、副業をしている人が少ない一方で、今後副業を「したいと思う」と回答した人は55.1%。「どちらかといえばしたいと思う」と答えた人は30.4%と、全体の85.5%の人が副業に対し興味があることがわかりました。
これらの調査結果より「副業したいけど、できていない」日本人がまだまだ多いという事実が見えてきました。ではなぜ私たちは副業をできずにいるのでしょうか。
理由として、以下が挙げられます。
このように日本では、副業に興味はあるけど、会社の規則や時間がないことを理由に、なかなか副業を始められない人が多いようです。
副業している人の割合が労働者の4分の1以下の日本に対し、世界の副業事情はどうでしょうか。アメリカ、ヨーロッパ、アジアに分け、解説していきます。順番に見ていきましょう。
ニューヨークに本社を持つアメリカの個人資産管理会社Bankrateが2023年4月に実施したアンケートによると、就業中のアメリカ人のうち39%が副業をしていることがわかりました。
アメリカでは、副業に関する法律上の規制がありません。日本では禁止されている公務員(教師や警察官など)の副業も、原則許容されています。学校の先生が、週末にはUberの運転手をしている、といったこともあるようです。
またアメリカの企業は、個人の能力と成果を重視しており、アメリカ人は自己成長のために副業をする傾向があります。幅広く仕事に挑戦し、経験を通じて自分の価値を確立したいと考えている人が多いです。
さらに、近年フレキシブルな働き方やワークライフバランスが重視され、テレワークやフレックスタイムを取り入れた会社が増えています。そのため、個々の生活スタイルやニーズに合わせて仕事ができるのが特徴です。
イギリスの副業制度を見てみましょう。イギリス ロンドンの金融機関Finderの調べでは、 2023年にはイギリス人の44%が副業をしていることがわかりました。中でもZ世代(一般的には1990年代後半から2012年頃に生まれた世代)の76%が副業をしており、他の世代と比較してとても多い傾向です。
しかし、イギリスでは原則週48時間を超えての労働は認められていません。さらに競業防止といった合理的な理由があれば、雇用契約に副業禁止の条項をいれることも可能です。そのためイギリスの労働者は副業ができなかったり、できても制限があったりする場合が多いのです。
イギリス人の働き方の傾向として、
ことが挙げられます。
もちろんイギリス人全員ではありませんが、限られた時間内で自分の時間をどう使うかを意識して働いてる人が多いようです。
また嫌な仕事を引き受けないというのは、嫌な仕事はやらないという意味ではありません。自分の苦手、嫌だと感じる仕事ばかりを引き受けるよりも、自分の得意分野で活躍して評価してもらうことで、自分の付加価値を高める働き方を目指そうという意識があるようです。
続いて、ドイツの副業事情を見ていきましょう。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構が2017年に行った調査「諸外国における副業・兼業の実態調査」では、副業従事者は約307万人で、労働者全体の約6.9%です。
ドイツでは本業外であっても、月450ユーロ(日本円約7万円/2023年9月現在)までの収入であれば非課税となる「ミニジョブ」という制度が浸透しており、副業している人のうち90%が、このミニジョブ制度を利用していることがわかりました。
このミニジョブ制度を使えば、パートであっても最低賃金や休暇、労災保険に関して、フルタイムの人と同じ待遇を受けられます。
またドイツは、先進国の中でも最も労働時間が短いと言われており、副業とあわせて、1日10時間を超えての労働は禁止です。
その影響もあり、ドイツ国民にとって副業はあくまで「本業の収入を補う」ことが目的です。働き方も日本とは異なり有給取得率が高く、2〜3週間程度のロングバケーションも取れます。会社の規模に関係なく労働者の誰もが長期休暇を取得し、自分の時間を楽しむ傾向にあります。
このように、ドイツではプライベートの時間をしっかり確保することで、仕事の生産性を高めることを重視しているようです。
最後にアジアの中で副業が盛んなベトナムの状況を見ていきましょう。
ベトナム市場調査会社の「Q&Me」が2014年12月に実施した調査によると 、ベトナムの労働人口の70%が定期的な副業を行っていることがわかりました。うち約50%が「お金を稼ぐ」ことが目的だと答えています。
ベトナムでは副業は労働者の権利として認められており、企業側も副業を禁止することはできません。
本業の労働時間は1日最大12時間までと決まってはいるものの、副業での時間は換算されないので、いくらでも副業できる環境が整っているといえます。
またベトナムでは、「収入は高ければ高いほうがいい」という考えの方が多いと言われています。その背景には家族のため、自分の好きなことをするために稼ぎたいという気持ちがあるようです。
私の友人は、ベトナムで日本語教師として3年間働いていました。ベトナム人は家族想いの人が多く、より良い収入を得るために日本語を勉強している人が増えているそうです。
一方、プライベートには一切仕事の話は持ち込まず、家族や友人との時間を楽しむことを優先しています。ただ稼ぎたいのではなく、稼ぐ理由・目的があることで頑張れる。だから人生が楽しいというマインドをお持ちの人が多いようです。
世界には日本とは異なる働き方や考えを持っている人がたくさんいます。あなたは今の働き方に満足していますか?
視点を少し変えるだけでも、新しい働き方のヒントが見えてくるかもしれません。
あなたは何のために働いていますか。また、副業をするなら、どんな目的のためにやりたいですか。
アメリカやイギリスでは自己成長を目的に働く傾向があります。そのため不要な残業をしたり、飲み会に参加したりはしません。
ベトナムでは家族や自分の人生を豊かにするために稼ぐという、明確な目標をもって働きます。
あなたはどうでしょうか。一度働く目的や、あなたの「働き方のマインド」を見直してみませんか。
今のままでは嫌だと感じているけれど、変えられずにいる人も多いのは事実です。
新しいことにチャレンジするのは、時間も体力も必要。でも先述したように、世界では、本業とのバランスをとりながら、目的を持って副業している人がいることがわかりました。
自分のキャリアを磨いて本業に活かす人、ビジネスにおいて自分の価値を高めたい人、目的は様々です。
日本は、世界と比べると法律や社会の環境上、まだまだ副業が認められる環境ではないかもしれません。それでも最近では少しずつ副業を解禁する会社が増え、多様な働き方を推奨する傾向にあります。
副業したいけどできずにいる日本人が多いのですが、できない理由を潰していき、新しい自分に会えるよう挑戦することも大切かもしれません。
私の場合、副業を始めてみたらお金よりも得ることが多く、刺激をもらえました。自分よりも忙しい中で時間をうまく抽出している社会人、生まれたばかりの子供を抱っこしながら仕事をこなすお母さん。
本業の会社の中では、決して出会うことのなかった人たちから影響を受けています。仕事の仕方を見直して、副業する時間を作った自分の行動は正しかったと感じています。
せっかく副業を始めるなら、目的を持って始めましょう。なんとなく稼ぎたいといった気持ちでは、長続きしないことも。まずは現状把握と、目標を明確にしませんか。
あなたの理想の働き方と現状の把握をしましょう。
例えば
など、一度自分の求める働き方と、今の働き方を書き出すことをおすすめします。現状を把握することで、理想にたどりつくために自分には何が足りないのかが浮き彫りになってきます。
自分の理想の働き方に足りないものが見えてきたら、行動目標を決めましょう。できるだけ具体的にすることがポイントです。
いつまでに達成したいのか、そのためには何か新しいスキルを身に付けた方がいいのか、いまの時間の使い方で期日までに間に合うのかなど、1日1日の時間の使い方まで細かく確認していきましょう。
目標までの期限を設けて、行動する内容が見えていれば行動しやすくなり、「何もせずに1年が終わった…」なんてもったいない時間の使い方はなくなります。
世界の副業事情と、働くことに対する考え方を紹介してきました。働き方は人によって異なりますが、「このために働く」という明確なビジョンを持つことが大事という考えは世界共通と言えるでしょう。
日本人の本質を変えるのは難しいですが、自分を持って、働くことを少しずつ意識するだけで、今の働き方を変えていけますよ。
この記事を書いた人
高橋奈々恵