副業で開業届を出すタイミングは?扶養でも開業届は出せる
さまざまな働き方が選べる時代。正社員やパートで働くほかに、副業をしている方も多いですよね。
副業をしている方の中には、
などと疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
今回は、副業の開業届に関する疑問を解決できるよう、記事にまとめました。さっそく見ていきましょう。
開業届とは、個人事業主やフリーランスとして仕事を始めたことを、税務署に届け出る書類です。
法律上、開業の事実があった日から1か月以内に提出することが義務となっています(所得税法第229条)。
継続的に事業を行っているのであれば、利益の有無に関係なく開業届を提出する必要があります。
副業をやっていても、たとえば日雇いの仕事だったり、一時的に収入を得ただけでは事業とはいえないので、開業届は必要ありません。「継続的」というのがポイントになります。
開業届を出すと、以降は税務署から「個人事業主」として扱われることになります。
この先も安定して収入が得られる保障はないし、「個人事業主」だなんて、自分にはまだ早い気がする・・・。その気持ち、よくわかります!今の時代、どうなるかわかりませんもんね。
提出が義務とはいえ、開業届を出していなくても罰則はなく、出すタイミングを自分で決められるともいえます。せっかくなら、賢く適切な選択をしていきたいものです。
では、開業届を出すのに適切なタイミングはいつなのでしょうか?
それは、副業による事業所得が年間20万円を超えるときです。
副業で得た1年間(1月1日~12月31日)の「所得(=売上−経費)」が20万円を超えたら、必ず開業届を提出して、確定申告をするようにしましょう。理由は、給与以外の所得が20万円以下であれば、所得税の申告をしなくてもよいためです。(住民税の申告は必要です)
副業の確定申告については、こちらを参考にしてください。
ところで、夫の扶養に入りながら副業をしている場合、個人事業主として開業することは可能なのでしょうか?
結論からいうと、扶養に入っていても開業できます。
というより、事業を開始したときは扶養とは関係なく届出が必要です。
しかし、扶養のままでいられない場合もあるので、ポイントをおさえておきましょう。扶養には、税法上の扶養と社会保険の扶養があるので、それぞれ解説していきます。
まずは税法上の扶養です。開業した人の年間合計所得(パート等の給与も含む)が48万円以下であれば、配偶者控除の対象となります。
48万円を超えると配偶者控除は受けられませんが、133万円以下であれば、配偶者特別控除の対象となり、控除される金額が段階的に少なくなっていきます。
開業届を出すだけで税法上の扶養から外れることはありません。
年間所得のため、副業のほかパート等をしている場合には、その給与も合算される点はご注意ください。
次に社会保険(健康保険・年金)の場合です。一般的に、社会保険の扶養に入れる条件は「収入130万円未満」といわれています。しかし、健康保険組合によっては「収入がなくても、個人事業主は扶養に入れない」と定めているところもあるのです。自己判断せずに、夫の会社の健康保険組合に確認するようにしましょう。
社会保険の扶養に入れなくなると、個人で国民年金と国民健康保険に加入することとなり、年間20〜30万円ほど負担が増えてしまいます。
また、扶養から外れると、夫の会社から福利厚生として配偶者手当や扶養手当が支給されている場合、受け取れなくなります。
開業届を出す前に、夫の勤務先の規定を確認しておきましょう。
ここまで、個人事業主やフリーランスとして仕事を始めたときは開業届を出す義務があることや、扶養との関係を解説してきました。続いて、開業届を出すことでのメリットやデメリットを見ていきましょう。
開業届を出す最大のメリットは、「青色申告特別控除が使える」こと。一定の条件を満たせば最大65万円の特別控除が受けられるので、大きな節税効果につながります。青色確定申告を行うのであれば、「青色申告承認書」の提出も必要です。開業届と同時に行うとよいでしょう。
事業所得が赤字の場合は、最長3年間繰り越せるのもメリットです。たとえば、開業届を出して始めの年が赤字でも、次の年が黒字の場合、始めの年の赤字を差し引いて所得を申告できるので、節税できます。
開業届を出すと、自分で決めた屋号が社会的に認められ、屋号名で金融機関の口座が作れるようになります。クレジットカードも作れるようになるので、個人のお金と事業のお金を、分けて管理することができて便利ですよね。
個人事業主が資金調達を考える際、補助金や助成金を利用する方法があります。申請する場合には、開業届を提出していることが条件に含まれているケースが多いようです。
青色申告で55万円の特別控除を受けるには、「複式簿記」での記帳と、「貸借対照表」と「損益計算書」の作成が必要です。
そのほかに、e-Taxによる申告(電子申告)や電子帳簿保存のどちらかを行うことで、受けられる特別控除が65万円になります。
白色申告に比べると複雑で手間はかかりますが、赤字を3年間繰り越せるなどメリットは大きいです。また、自分の事業の状況を詳しく把握できるので、今後の改善にもつながりますよ。
確定申告と聞くと、難しそう・面倒だと感じる方も多いでしょう。しかし、給与以外の所得が年間20万円以上の方にとっては、正しい納税のために必要な手続きです。そして、払いすぎた税金が戻ってくる場合もありますよ。あまり知識がない方でも、簡単に青色申告を行えるソフトを利用するのも一つの方法です。
失業保険は、退職した人が生活費を心配することなく次の仕事を探せるよう、一定期間お金を受け取れる制度です。開業届を提出していると「失業中ではない」とみなされ、失業保険は受けられません。退職して失業保険を受給しようと思っている方や、受給中の方は、タイミングを考えて開業届を出しましょう。
副業であっても個人で事業を行う場合は、開業日から1か月以内に「開業届」を提出する必要があります。しかし、特に罰則があるわけではないので、自分の中で「この先は副業を事業として続けていこう!」と、決意したタイミングで提出するのがよいでしょう。
確定申告の必要性等を考慮したうえでのおすすめのタイミングは、「年間20万円を超える所得を継続して副業で得られるようになったとき」です。その際、ご自身の状況(扶養や失業保険など)に合わせて、適切なタイミングを見計らいたいですね。
あなたの充実した副業ライフを応援しています!
この記事を書いた人
藤原里奈