農業の副業というと、「えっ?農業で副業⁉︎」と驚く方もいるのではないでしょうか。私は田舎に住んでいるので、実家のすぐそばに畑があり、家庭で食べる野菜の栽培くらいはしています。
近所には大規模な農園もありますが、ほとんどが専業農家。どちらかと言えば副業で農業をする方は、中高年層が多い印象です。
ですが、テレビなどでは週末農業や週の半分を農業に充てたり、家庭菜園から収益を出したり、アルバイトやパートで農業をするなど、さまざまな働き方で副業農業を始める若年層もいると聞きます。
本記事では、副業農家の気になる年収やおすすめ作物をご紹介します。趣味の家庭菜園から収益をあげたい方や、副業で農業をしたいという方は参考にしてくださいね。
副業で農業はできる?気になる年収やおすすめ作物を紹介
副業農業を始める方法は、次の4通りがあります。
詳しく説明します。
農業初心者さんには、まずは農業自体を体験してみることをおすすめします。体験方法は色々ありますが、日帰りの農業体験や、日雇いのアルバイト、ワーケーションなどがあります。
農業のプロからアドバイスが受けられ、副業農業を始めてからも参考になる体験会です。また、移住して農業を始めようと考えている方は、自分たちにその土地が合っているかもわかる機会になるでしょう。
手軽に副業農業を始めたいなら、市民農園や貸し農園から始める方法もあります。
市民農園は、小規模の農地を借りて農作物を育てる農園のことです。レクリエーションや健康維持が目的なので、基本的に家庭で消費する野菜の栽培がメイン。家庭で消費できる量を超えた場合のみ販売可能で、農機具類は自分で用意しなければいけません。
貸し農園は手ぶらで通える農地レンタルサービスです。必要な資材や道具は、レンタル料金に含まれています。こちらも営利目的のサービスではないので、農業技術や知識を学ぶために利用する人が多いです。
副業農業を始めるには、地主から農地を借りる方法もあります。
地主から借りて個人で農業を始めるには、一定の要件をクリアして農業委員会からの許可が必要です。
要件は以下の通り。
この要件は週末だけ農業をするくらいでは、クリアするのが難しいでしょう。週の半分は農業をする、または本格的に農業を始めたい人に向いています。
副業農家を始めるには、自分で農地を買うか、土地を相続する方法があります。親から相続する場合は、農機具や施設、販売ルートなどが確保されていることも多く、始めやすいでしょう。
ですが、自分で農地を購入した場合、農機具や販売ルートの準備や、農地を耕す必要もあります。また、農業の技術や知識も自ら勉強していく必要があるので、相続する場合よりはたくさんの準備が必要になるでしょう。
私の場合は実家に畑があるので、始めるならこの方法。ただ大きな農機具などはないので、規模を大きくするならそれなりの初期投資が必要になりそうですね。
2020年以前は、本業をしつつ農業もしている人を『兼業農家』と区分していましたが、今は廃止されています。
今はどのように分けられているかというと、以下の二つです。
引用:統計(とうけい)で使う主副業別(しゅふくぎょうべつ)農家はどのように区分されているのかおしえてください
ここからは副業農家の実態を3つの項目に分けて説明していきます。
令和3年の農林水産省統計によると、農業経営全体の平均粗収益は1,076.9万円。前年より8.5%伸びており、作物収入や畜産収入が増えているからだそうです。
また、令和2年の農林水産省農業経営統計調査では、主業農家の平均所得が433.5万円でした。そして、副業農家の平均所得はというと、手取りで23.8〜60.1万円。
2022年のJob総研の『副業・兼業に関する実態調査』によると、副業兼業で得ている収入の中央値が100万円なので、副業としては非効率かもしれませんね。
参照:農家の平均年収はいくら?手取り額や儲かる農家の条件についても解説
農林水産省の2020年農林センサスによると、個人経営体(個人で事業を行っている世帯)の農家の数は次の表の通りです。
全体 | 主業 経営体 | 準主業 経営体 | 副業的 経営体 | |
平成27年 (2015年) | 1,340,000 | 292,000 (21.8%) | 259,000 (19.3%) | 58,900 (58.9%) |
令和2年 (2020年) | 1,037,000 | 231,000 (22.3%) | 143,000 (13.7%) | 664,000 (64.0%) |
注:単位は世帯数。( )内の数字は個人経営体数に占める割合(%)です。
参照:2020年農林業センサス確報 第2巻 農林業経営体調査報告書 -総括編-
この表を元に考えていくと、個人経営体数は減っていますが、副業で農業をする人は増えていて、割合も多くなっていることがわかります。
副業農業にメリットを感じて、始める人が多いということでしょうか。
農業は人気が無いイメージでしたが、予想外に副業で始める人が増えているようで驚きました。働き方やメリットが気になるところですね。
副業的に農業をしている人の働き方はさまざまな形があります。
例えば、週末農家や週の半分を農業に充てる働き方、家庭菜園から収益を出したり、アルバイトやパートで農業をしたりする方法も。
では、農業を副業にしている人は、何日くらい農業をしているのでしょうか?
1〜29日 | 30〜59日 | 60〜99日 | 100〜140日 | |
準主業経営体 | 105,681 | 37,214 | 86,870 | 57,296 |
副業的経営体 | 469,064 | 270,849 | 140,761 | 129,588 |
150〜199日 | 200〜249日 | 250日以上 | ||
準主業経営体 | 40,451 | 26,950 | 47,445 | |
副業的経営体 | 116,914 | 110,672 | 204,184 |
単位:人
参照:農林業センサス 2020年農林業センサス 確報 第3巻 農林業経営体調査報告書 ―農林業経営体分類編-
表で見ると、農業を副業にしている人が農業をしている日数は、年間30日未満の方が圧倒的に多いことがわかります。その他の項目は全体的にばらつきがみられ、働き方が多様化していることが伺えます。
副業農家の場合、作業できる時間には限りがあります。そこで、育てやすい農作物を以下の表にまとめました。
作物例 | 特徴 | メリット |
しいたけ・みょうが・タラの芽・アスパラガス | 単価が高い比較的手間がかからない | 少ない収穫で収益を上げやすい |
さつまいも・ジャガイモ・里芋・ビーツ | 土の中で育ち、水やりの頻度が少ない | 手間がかからない肥料が少なくてすむ収穫時期が長い |
トマト・ナス・オクラ・枝豆 | 狭い範囲でも始められるひとつの苗からたくさん収穫できる | 小スペースで作れ、小さな菜園でも育てやすい定番野菜なので販売しやすい |
えごま・パセリ・つるむらさき | 半日陰でも育つたくさん収穫できる | 手間がかかりにくい少し珍しいので、販売ルートにも参入しやすい栄養価が高い |
比較的育てやすく、収益化しやすい野菜をピックアップしています。ですが、農作物なので、土地や環境によって向き不向きがあるはずです。
それぞれの気候や土壌に合う農作物を育てましょう。
収穫した野菜は、販売しなければ収益にはなりません。そこで、野菜の販売先を以下の表にまとめました。
ある程度の収穫量が見込めるのであれば、販売ルートは複数ある方がリスクも少なくなります。メリット・デメリットを考慮して、販売ルートを検討してくださいね。
販売ルート | メリット | デメリット |
直売所 | 価格設定が自由高単価で販売可能 | 売れないと利益にならない利用料が必要な場合も |
JA | JAが買取してくれるのですぐに収益化安定した収益売上の見通しがきく | 規格が厳しい買取価格が自由に決められない |
ネット販売 | 価格設定が自由SNSやブログで集客可能 | 差別化など販売に工夫が必要売れないと利益にならない |
知人に販売 | 気軽に販売できる | 高単価では売りにくい |
私の周りでは、JAと直売所での販売を併用している副業農家さんが多いです。
お店をやっている知人に販売している方もいるでしょうが、高単価では売りにくいので、他の販売ルートも確保した方が良さそうですね。
副業農家をするメリットは、次の5つです。
詳しく説明します。
副業農家をするメリットは、新鮮な農作物が食べられることです。
また自分で育てた野菜には、愛着もわき、さらに美味しく感じられるはず。購入費用が抑えられることもメリットの一つと言えます。
私には小学生の子どもが2人いて、農業体験は子どもの食育に役立っています。
自分の畑があれば、いつでも野菜作りの大変さや育てた野菜の美味しさを伝えられ、食材を大切にする心が育ちますよ。
本業がデスクワークの方であれば、副業でも自然に触れる機会があることは、ストレス発散に繋がります。
また、農作業によって運動不足も解消でき、健康的になれますよね。自分が作ったもので、周りの人を喜ばせたいといった生きがいや楽しみにもなるでしょう。
副業農業のメリットとして、ビジネスとして確立できることがあります。副業農業は、家庭菜園の延長で食べきれないものを販売するのもいいですが、大規模ビジネスとして発展させることもできます。
もちろん、発展させるには農業技術や知識、経営についても学ばなくてはいけません。ビジネスとして始めるなら、ある程度収穫量が確保でき、安定した収入が見込めるようになってからにしましょう。
地方の農業には、後継者不足や放置された農地の問題などがあります。自ら農地を買って農業を始めたり、農家の手伝いをしたりすることで、地域に貢献できるでしょう。
農業を通じた新たな人との出会いや繋がりも、副業農業のメリットと言えます。
私の地元秋田県も、後継不足で放置された農地が問題になっています。副業農業であっても、農業を始めてくれる人は貴重な存在です。まずは、農業に興味を持って、体験して欲しいですね。
副業農業のメリットは、自分のペースで農業ができることです。農業が本業の場合は、収入源が農業になり、ある程度の収入を目標に頑張らなければいけません。
ですが副業であれば、元々本業の収入があるので、ある程度の収入は確保されています。その分プレッシャーを感じることなく、自分のペースで農業を楽しめるはずです。余裕を持って楽しめることも、副業農業の魅力でしょう。
副業農家のデメリットは、次の3つです。
詳しく説明します。
副業農業のデメリットは、初期投資が高額であることです。ある程度収益を望むのであれば、農地の広さや農機具・作業人数に費用がかかります。
初期投資以外にも、農地を維持するのに費用がかかるので、計画的な準備が必要です。
補助金があると言っても、初期投資に費用がかかるのは、大きな負担となります。副業農業も少しずつ大きくしていくのが、成功の鍵になりそうです。
農業は自然相手の仕事なので、天候や自然災害、獣害などによって不作になることも考えられます。天候はコントロールできませんが、事前に気象情報などを確認して対策をとれば、ある程度は対応できるでしょう。
害獣や害虫の被害も、事前の対策が必要です。土地を購入する前に情報を集め、どの程度の対策が必要か確認しましょう。
夏の日照りや長雨、台風など、農業は自然環境の影響を受けます。また地域によっては、猿やイノシシ、熊などさまざまな害獣被害が考えられます。情報収集をしっかりして対策を立てたいですね。
農作物は日々成長するので、定期的に作業する必要があります。扱う品種によっては、害虫被害や病気になりやすいことも。
また、収穫時期が早過ぎても遅過ぎても売り物にならない可能性もあります。収穫のタイミングには気を遣う必要があるでしょう。
もし、本業が忙しいという方は、根菜類など比較的手間がかからない農作物を選ぶといいですよ。
副業農家をする際のポイントと注意点が、それぞれ1つずつあります。
詳しく説明します。
副業農家をする際のポイントは、補助金を使うことです。新規就農者が受けられる補助金・助成金は次の3つがあります。
これから農業を始める人の研修や就農後の生活を支援するための助成金。
国が支援しているもので、独立・自営就農または雇用就農を目指す49歳以下の研修生が対象。
支援額は年間150万円を最長2年としている。
就農者が農業を始めてから、経営が安定するまでの期間を支援するための助成金。こちらも国が支援しており、前年の世帯所得が原則600万円未満の認定新規就農者(49歳未満)が対象。
支援額は、年間150万円で最長で3年間としている。
就労後に経営を発展させるため無利子で融資を受けられ、返還資金を国と地方自治体が毎年肩代わりしてくれる制度。就農から3年以内の独立・自営就農車が対象で、補助金の上限は1,000万円となっている。
参照:経営発展支援事業
補助金はこのほかにもあり、用途に合わせて使い分ける必要があります。
どんな副業であっても、年間20万円以上の所得(収入ー経費)が発生すると確定申告が必要になります。雇用先から支払われる給与であれば、年末調整が行われるので、確定申告が不要です。
ですが、自営業や家庭菜園など雇用されていない働き方の場合は、確定申告が必要なことも。
確定申告についての詳しい説明は、こちらの記事に書かれています。参考にしてください。
副業農業で稼ぐようになるには、作物選びや販売方法に気をつける必要があります。副業農業は、稼いでいる人と稼いでいない人で二分された状況です。
軌道に乗せ収入の柱にするには、売れる作物選びや就農時間・販売方法の工夫が必要になります。本気で副業農業を始めようと思っている方は補助金や研修制度も利用して準備を整えましょう。
この記事を書いた人
畠山 かおり