会社員やOLで副業をしている人や、フリーランスとして働いている人は、「副業収入が20万円を超えたら確定申告」ということはご存知かもしれません。
しかし、実際のところ「売上なの?経費を引いた金額なの?」、「自分の場合は対象?対象外?」といった疑問が生じてくるでしょう。
この記事では、会社員で副業をしている方やフリーランスが、どのようなときに確定申告が必要なのかをファイナンシャルプランナーが解説します。
私自身は、結婚を機に会社を退職してから10年以上、自分の確定申告と、会社員で副業をしていた夫の確定申告、脱サラ後の夫の確定申告を経験しています。
はじめての方でも判断できるように、お伝えしていきます!
【FPが解説】会社員の副業やフリーランスに確定申告が必要なのはどんなとき?
確定申告=税金を納める制度と考えて、「やりたくない」、「めんどくさい」というイメージをお持ちの方もいらっしゃると思います。
でも、「確定申告で払いすぎた税金が戻ってくることがある」と言われたら、少し興味がわいてきませんか?
確定申告は、”正しく税金を納めるための制度”で、所得や資産を自分で集計して、課税の対象となる金額を出し、納めるべき税金を算出します。その結果、不足している税金を払うこともあれば、多く納め過ぎた税金を戻してもらえる制度なのです。
一般的には「副業の所得が20万円を超えたら確定申告」といわれていますが、前述の通り、確定申告をして納めすぎた税金を取り戻せることもあります。
そのためには、所得だけで判断をせず、「申告できる控除はないか?」という視点も持ちましょう。
例えば、会社員の申告が多い控除は、大きな病気や出産をしたときなど医療費を10万円以上支払ったときの「医療費控除」です。こちらは年末調整では控除できないので、確定申告で多く払った医療費を戻してもらいます。
所得の種類と控除については、次のセクションで詳しく解説していきます。
個人の場合、前年1月1日から12月31日までの所得や資産に対して、翌年2月16日から3月15日までに行います。過去、新型コロナウイルス感染症のまん延等で提出期限が延長されたケースもありますが、平日・祝祭日に関わらず、3月15日が期限と覚えておくと確実です。
尚、遅れてしまうと、無申告加算税や延滞税の加算、青色申告特別控除が減額される(65万円→10万円)など、ペナルティで損をしちゃいます。期日は守りましょう。
確定申告では所得を10分類し、それぞれ自分で集計します。
副業やフリーランスとして、給与所得以外の収入があるときには、それがどの所得に該当するかを確認して、確定申告書を作成します。
その際、所得の種類によっては、所得を得るために使った経費を引いたり、控除として一定の金額をマイナスできたりします。また、10の所得を合計した結果からマイナスする控除もあります。
初めての場合、いちいち計算するのは難しく感じるかもしれません。でも、会計ソフトなどを使えば、簡単に集計できるので、確定申告をすることになっても安心ですよ。
所得は、下記のように10種類に分かれています。
フリーランスとして継続的に収入を得ている場合には事業所得、フリマ販売や単発バイトなどの不定期な収入は、経費を引いて20万円を超えた場合に、雑所得として申告をします。
その他、不動産や金融投資による副業所得や退職金などは、それぞれ控除があるので、実際の収入よりも低い金額が課税の対象となります。
【10の所得一覧】
所得の種類 | 計算方法 | 年末調整の対象か? | |
① | 事業所得 | 継続的に行われる事業による所得で、所得から経費を引く | ✕ |
② | 不動産所得 | 不動産の貸付けによる所得で、経費を引く | ✕ |
③ | 利子所得 | 公社債や預貯金の利子 | ✕ |
④ | 配当所得 | 法人から受ける利益の配当で、負債などは引く | ✕ |
⑤ | 給与所得 | 給与、ボーナスなどから給与所得控除を引く | ◯ |
⑥ | 一時所得 | 懸賞などの賞金、競馬等の払戻金、生命保険の一時金などで、支出した金額と特別控除を引く | ✕ |
⑦ | 譲渡所得 | 土地建物等を譲渡したときの収入で、取得や譲渡にかかった経費と特別控除を引く | ✕ |
⑧ | 退職所得 | 退職金から退職所得控除を引く | ✕ |
⑨ | 山林所得 | 山林によって得た収入で、経費と特別控除を引く | ✕ |
⑩ | 雑所得 | 上記のどれにも当たらない所得で、公的年金は公的年金等控除、公的年金以外は経費を引く | ✕ |
フリーランスの場合は、年末調整が無いので、全て確定申告で控除します。
会社員やパートなど給与所得がある方は、ほぼ年末調整で控除できるので、対象になっていないものだけ、確定申告で控除しましょう。会社員の方にも、馴染みのあるものから順に紹介していきます。
【15の控除一覧】
控除の種類 | 引ける金額の目安 | 年末調整の対象か? | |
① | 社会保険料控除 | 健康保険や雇用保険、年金など本人分の他、負担している家族の分も対象 | ◯ |
② | 小規模企業共済等掛金控除 | iDeCoや小規模企業共済などの掛け金 | ◯ |
③ | 生命保険料控除 | 一定の金額が対象 | ◯ |
④ | 地震保険料控除 | 地震保険料を最高5万円 | ◯ |
⑤ | 医療費控除 | 医薬品購入金額の合計12,000円から対象 | ✕ |
⑥ | 寄付金控除 | ふるさと納税など | ✕ |
⑦ | 雑損控除 | 家屋など生活に必要な資産が損害を受けたときの一定額 | ✕ |
⑧ | 基礎控除 | 納税者の所得が2,500万円以下の場合に最高48万円 | ◯ |
⑨ | 配偶者控除 | 納税者の合計所得が1,000万円以下で、配偶者の合計所得が48万円以下のとき最高38万円 | ◯ |
⑩ | 配偶者特別控除 | 納税者の合計所得が1,000万円以下で、配偶者の合計所得が48万円超133万円以下のとき最高38万円 | ◯ |
⑪ | 扶養控除 | 16歳〜23歳未満または70歳以上の同居の扶養親族がいる場合 | ◯ |
⑫ | 障害者控除 | 本人または配偶者、同居の扶養親族が障害者の場合 | ◯ |
⑬ | 寡婦控除 | 合計所得が500万円以下の寡婦の方は27万円 | ◯ |
⑭ | ひとり親控除 | 合計所得が500万円以下のひとり親は35万円 | ◯ |
⑮ | 勤労学生控除 | 合計所得が75万円以下でそのうち勤労所得意外の金額が10万円以下の学生は27万円 | ◯ |
それぞれの詳細は国税庁のホームページで確認してください。
上記のほか「住宅ローン減税」など、所得から税金を控除することができる税制優遇制度を受けるときにも、確定申告が必要な場合があります。
税制優遇制度については、各省庁のホームページまたは、お住まいの地域を管轄する税務署で確認してください。
ここまでに紹介をした、10の所得の合計から、15の所得控除を引いてみた結果、下記に一つでも該当する場合は、確定申告が必要です。
また、年末調整をしていても、そのときに忘れていたり、状況が変わった場合には確定申告をすることで、修正することができますよ。
事業として継続的に行っているものについては、確定申告をしましょう。「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」を提出していれば、利益が出ず赤字の場合も、確定申告をすることでマイナスを3年繰り越すことができます。
所得を合計して、課税所得が20万円を超えていたら、確定申告をします。自分で判断できないときには、お住まいの地域を管轄する税務署に相談してみましょう。確定申告の時期に関わらず、税金に関する相談窓口で親切に教えてくれますよ。
前述の通り、医療費控除や寄付金控除など、確定申告をしないと、受けられない控除があります。
寄附金控除のうち、人気のふるさと納税は、寄付先が5自治体以内であればワンストップ特例制度を利用して、確定申告をしなくても大丈夫です。しかし、6自治体以上の場合は、確定申告をしないと、ふるさと納税のメリットである住民税の控除が受けられません。
会社の年末調整(10、11月ごろ)の後、年末までの間に、扶養対象の家族に変化が生じた、新しく保険に加入した、住宅を購入したなどの場合は、確定申告が必要です。
確定申告に対するイメージ、少しは良くなりましたでしょうか?
難しそうだなと思っても、今は便利な会計ソフトがあったり、自治体や行政の相談窓口も充実しているので、疑問を解消することもできます。
副業をされている方は、経費として使ったものの領収書をしっかり保管して、初めての年は、スケジュールに余裕をもって確定申告の準備をしてみてください。
下記の記事も参考になりますよ。
この記事を書いた人
鈴木恵理